主要研究プロジェクト

  1. アルツハイマー病の根本的治療法の開発を目指した最先端基礎研究
  2. USUKI STUDY(認知症リスク因子の探索的研究)
  3. アルツハイマー病の超早期診断を目指したアミロイドイメージングを用いた臨床研究
    (Preclinical AD)
  4. 家族性アルツハイマー病を対象とした治験:DIAN-J 研究
  5. 脳血管障害の臨床病理学的研究
  6. 神経筋疾患の病態解明と治療法の開発
  7. 認知機能低下をきたす神経変性疾患の病態解明と早期診断法の開発

認知機能低下をきたす神経変性疾患の病態解明と早期診断法の開発

研究の全体構想

認知症をきたす神経変性疾患の患者背景、臨床評価、血液・脳脊髄液検査、画像検査、生理検査のデータをもとに病態の解明および早期診断技術の開発を行う。

研究の背景と研究内容

認知症の患者数は増加の一途を辿っており、克服は全世界的な課題である。
認知機能低下をきたす神経変性疾患には、アルツハイマー病をはじめ、ピック病、レビー小体型認知症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、筋委縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症がある。
各疾患の原因は、いまだ不明であり、根本的治療法もない。
また、現在の対症療法も早期に治療を開始しなければ十分な効果は期待できない。
本研究により神経変性疾患の病態を解明し、早期診断法を確立することで発症予防および進行抑制に有効な新規治療法の開発につながる。

本研究は、通常の診療で得られた診療情報や残存検体等を使用して行います。
さらに、過去の診療情報や残存検体等も対象に含めます。
本研究でのデータおよび試料は、個人が特定されることがないように保管します。
また、研究成果は医学の発展のために学会や論文などで発表させていただくことはありますが、その際も個人が特定される情報は全て削除いたします。

この研究のためにご自分のデータを使用してほしくない場合は、お問い合わせください。
ご連絡を頂かなかった場合、ご了承いただいたものと考え、データの処理をいたします。
試料やデータの利用につきましてご承諾いただけない場合においても、実際の診療内容には影響いたしませんし、診療上の不利益を受けることはありません。

詳細について

詳しくは、本研究に関する「研究概要」または「説明書」をご参照ください。

臼杵市における認知症研究説明会が開催されました。詳しくはこちらへ >>

臼杵市における認知症対策をスライドショーで見る

【臼杵市における認知症対策の歴史】

臼杵市では、平成18年から認知症診療における医療連携を開始した。当初は医師を対象とした認知症講演会および研究会を繰り返し、認知症対策の必要性を共有するとともに顔のみえる医療連携体制を構築した。同時期に市行政も認知症の啓発、認知機能検診および疫学調査などを実施していたが、医療や介護との連携はなかった。しかし、平成21年に認知症対策に積極的であった副市長のご尽力により、市行政、医療、介護・福祉の連携が急速に前進した。平成22年からは多職種連携による「臼杵市の認知症を考える会」を立ち上げ、同年11月に第一回の認知症市民フォーラムを開催した。さらに、翌年から在宅高齢者を対象として認知症講演会による啓蒙および認知機能検診による早期診断・早期治療を目的とした「なるほど認知症講座」を開始した。平成24年からは医療と介護・福祉の連携強化と認知症患者のケアの向上を目指した多職種合同の事例検討会を開始した。さらに、認知症患者を支援するサービス従業者に対する専門研修を実施することで在宅・施設サービス従業者の資質の向上を推進した。平成25年から認知症検診により軽度認知障害と判定された高齢者を対象に運動と対人交流を抱合した予防プログラムを開始した。

【認知症の啓蒙および認知症検診】

認知症の啓蒙活動として臼杵市の認知症を考える会が主体となり、市民全体を対象とした「認知症市民フォーラム」(1回/2年)と地域(19小学校区)の在宅高齢者を対象とした「なるほど認知症講座」(3回/年)を実施している。「認知症市民フォーラム」では初回(平成22年)に1600人、第2回(平成24年)には1300人という多数の参加者があり、市民の認知症に対する関心の高さがうかがえた。「なるほど認知症講座」はこれまでに6地区(65才以上の総人口:3706人)で実施し、総計で846人が受講した。
また、臼杵市で最も推進している認知症対策として地域在宅高齢者から認知症および認知機能が低下している人達をできるだけ早期に発見する認知症検診活動がある。これまでに実施した二つの取り組みについて紹介する。

【地域在宅高齢者を対象とした認知症検診】

65歳以上85歳未満の在宅高齢者を対象として小学校区ごととに認知症の啓蒙および検診活動を実施した。さらに、希望者に対してタッチパネル式早期診断システムを用いた一次検診を実施した。12点以下の者について、さらに日本神経学会専門医による二次検診を実施し、問診、神経学的診察、Alzheimer’s Disease Assessment Scale検査を行った。
これまでに6小学校地区で市民公開講座を開催し、846人(男性264人、女性582人;平均年齢76歳)に対して認知症の啓蒙を行った。さらに、331人(平均年齢76.4歳)に対してタッチパネル式認知症診断システムを用いた認知症検診を実施した。一次検診では331人中77人(23.3%;平均年齢79.6歳)が12点以下であった。認知症と診断された者は、地域基幹病院または大分大学医学部附属病院で頭部MRIおよび脳血流SPECT検査を施行し、かかりつけ医での早期治療が可能となった。軽度認知障害と診断された者は、認知症予防教室への参加を促した。

【かかりつけ医における認知症検診】

認知症早期発見のもう一つの柱は、かかりつけ医の外来で「物忘れ相談プログラム」を行う認知症検診である。実際の外来では、1)65歳以上の通院患者、2)日常診療で認知機能低下や認知症を認めない者、3)高度の視覚・聴覚障害や手指の変形および麻痺がなくタッチパネルパソコンを正確に押せる者、4)検査を行うことに同意した者を対象としている。当院で連続的に行った物忘れ相談プログラム初回検査結果を図4に示す。962例(平均年齢76才)の中で物忘れの可能性がある12点以下は21%であった。さら、年齢別に検討すると12点以下は、74歳以下の患者の9%であるのに対して、75才以上の患者では29%と増加し、加齢による認知機能低下が示唆された。外来スクリーニング検査では、通常診察では知りえなかった認知症患者の早期発見が可能となり、早期から治療薬が開始された。現在、12施設で外来スクリーニング検査を実施している(図5)。

【認知症予防】

2013年より認知症検診により軽度認知障害と判定された者に対する予防活動を開始した。現在、12名の軽度認知障害者を対象に運動と対人交流を抱合した予防プログラムを週1回実践している。

多職種連携

臼杵市では、市医師会、地域基幹病院、大学病院、市行政、介護施設による多職種連携体制の構築を推進している(図1)。具体的には、地域在宅高齢者を対象とした予防活動および認知症検診活動、市医師会および地域基幹病院との連携による早期診断・治療、市医師会および介護施設との連携による事例検討会や研修会を開催してきた。実際に診療や介護を行っている認知症患者における医療および介護の問題点や対応策に関して検討することで認知症に関する知識が高まり、多職種の連携が強化した。さらに、様々な年齢層および様々な職種の人達を対象に認知症サポーター養成講座を開催し、これまでに3000人を超えるサポーターを養成した。平成24年からは小学生を対象に認知症看護認定看護師によるキッズサポーター養成講座も開催し、子供達にも認知症の啓蒙活動を開始している。

認知症では患者のみならず家族にも重い負担がのしかかる。このため患者および介護者を対象に認知症家族の会大分県支部による「家族支援プログラム」や「介護者のつどい」を開催した。また、認知症を地域で支えるという観点から医療機関、介護事業所だけでなく認知症に理解のある商店や事業所の参加による「認知症地域資源マップ(お助けマップ)」を作成した。

「アミロイドイメージングを用いた臨床研究」をスライドショーで見る

【アミロイドイメージングを用いた臨床研究】

大分大学付属病院では、2011年にBiograph mPET/CT(Siemens Medical System)とサイクロトロン(住重CYPRIS HM20S)が装備された分子イメージングセンターが開設され、アミロイドイメージングに用いる11C-Pittsburgh compound B ([C-11]PiB)の合成が可能となった。脳脊髄液中のAβ42、リン酸化タウ蛋白(181P)、総タウ蛋白などの生化学的バイオマーカーの測定も可能となった。これにより大分大学医学部では、2012年から軽度認知障害を対象とした[C-11]PiB PET、18F-fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG)-PET、3.0T-MRIの先端画像検査による臨床治験を開始した。これまでに、認知症検診および医療連携の中で検出された65歳以上の軽度認知機能障害者47名に対してアミロイドイメージングを施行し、30名(63.8%)に脳内アミロイド沈着を認め、早期治療および早期支援が可能となった。これらの最先端の診断技術が整備されたことで認知症の早期診断および早期治療から在宅医療支援まで切れ目のない効率的で質の高い医療提供体制が構築された。将来的に抗アミロイド療法による発症前治療が可能となれば、認知症の早期診断を可能にする地域医療連携体制、先端脳画像検査による高度な診断技術がさらに重要となることは必然である。

その他の研究

医療と介護の連携を目的とした新たな行動・心理評価法の開発

介護現場で役立てるため、BPSD(認知症の行動・心理症状)の評価スケールを、豊後大野市の介護施設と連携して行っている。

・ 表情認識とタッチパネル式認知機能検査を用いた認知症スクリーニングシステムの開発

産学官連携事業。動画・写真を撮影して認知症のスクリーニングを表情から認識するソフトの開発を、県内のソフトウェア関連企業と連携して行っている。